ゲーム実況者「セサミンの姉」からRPGの本質を考える

 あなたは「セサミンの姉」というゲーム実況者をご存知でしょうか。知らないならそれは至極当たり前で、彼女はニコニコ動画再生数1000前後という正直なところなんとも言いがたい数字を維持し続けながらゲーム実況をされています。

 数年前からファイナルファンタジーシリーズなどのRPGを中心に実況しており、まれにシミュレーションゲームやアクションゲームも投稿しています。そんな彼女の持ち味は、一言で言えば、超がつくほど鈍臭いことです。

 まず動画を観て一番に感じることは、滑舌が非常に悪いこと。何を言っているのかまるで聞き取れない事もありますし、文章の読み間違いも非常に多く、特にカタカナに弱いため、滑舌の悪さも相まって、途中で読むのをやめることもしばしばあります。

 さきほど言ったようにプレイ自体も鈍臭く、ゲーム画面内で何かが起きても反応が著しく悪いために何が起きたかわからずパニックになったり、ちょっとしたミニゲームでは基本的に理解が及ばずまともなプレイにならず、しかしまれに奇跡が起きてクリアできることも――。

 しかし、そんな彼女のプレイでも、ゲームはテンポよく進んでいくのです。これ以上に鈍臭い人はいるのか?本当に内容を理解しているのか?色々と疑問に感じながらもちゃんとクリアまで進みます。RPGの中でも硬派な部類のファイナルファンタジークロノトリガーも多少詰まることはあれど、基本的にテンポよく進んでクリアしていくのです。

 その彼女のプレイから、RPGとはなんなのだろう?と感じる事がしばしばあります。彼女のプレイから感じた事は、「レベルを上げればボスは倒せる」「思っているよりもRPGの敷居は低い」「クリアは誰でもできるようにできている」ということです。

 動画を少し観てもらえばよくわかると思うのですが、「レベルを上げればボスは倒せる」といっても、彼女はそれほどレベルが高いわけでもなく、FFの戦闘システムであるATBでありながら非常にゆっくりとコマンド選択をしているにも関わらず普通にクリアしていきます。シナリオ面でも詰まる事なくどんどん進んでいけるようにできていますし、ラスボスも案外簡単に倒してしまうのです。

 最後の2点は特にFFなど一部のRPGに限る事かもしれませんが、RPGというのは「誰でもクリアできる」「誰でも楽しめる」というのが良いところなんだと思います。それをFFはうまく表現していたという事でしょう。シナリオにおいても二重三重と大事な事をキャラクターに言わせたり大きく表現する事でシナリオを理解させ、理解力が乏しい彼女でもゲームの世界に浸れるもらうようになっていました。

 僕が思うに、「セサミンの姉」さんはRPGはどういうゲームなのかを理解させてくれる隠れた名実況者じゃないでしょうか。まぁそう思わせてくれるのは彼女のゲームスキルが並以下であることなので迷実況者というのが正しいかもしれませんが……。

 そんな迷実況者の「セサミンの姉」さん。プレイは非常に拙いものがありますが、謎すぎるネーミングセンスや理解が難しい感情の起伏、時折見せる女性とは思えない絶叫など、他の実況者にはないものがたくさんあります。見ていてイライラしたり肌に合わない人は割合としてかなり多いかもしれませんが、なかなか見ることのないスタイルのゲーム実況なため、part1だけでも見てもらえると一ファンとして嬉しい限りです。オススメはファイナルファンタジー6ですが、初実況のクロノトリガーは刺激が少なく普通にゲーム実況として成り立っていて入りやすいかと思います。

 

彼女の処女作。滑舌が良く普通の女性実況者のようだが、プレイ内容は彼女そのもの

 

実況2作目にあたる。彼女らしさが存分に出ており、ネーミングセンスの良さも光る。

 

現在進行中のFF9。久々のゲーム実況ながら独特な実況スタイルは健在

 

ゲーム実況part1一覧。アクションやレースなどでも彼女の良さはよく出ている