運命の出会いと別れ

 メッセージを送り合う「マジカルメール」というアプリがある。「マジカルメール」で仲良くなった人はあまりいないのだが、つい先日、女性のメールアドレスを聞き出す事に成功したので、その話をしようと思う。

 それは深夜のことであった。そろそろ寝ようかなと思っていた矢先、「マジカルメール」からメッセージが送られてきたのだ。

 24歳関東女ミポポ「ラインってやってる?いっぱい飲んじゃったからムラムラしちゃってる(!ノ3<*)xxx48でやってるから絡みに来てね♪

 いきなりのLINEへの誘い。しかも性欲フル回転状態。酔ってるってことは色々できたりするんじゃないのか!?などと妄想を膨らませ、同時に股間も膨らんでいく。眠気も一気に吹っ飛び、すかさずLINEから「マジカルメールからきましたー」とメッセージを飛ばした。すると、間もなくして返事が返ってきた。

 24歳関東女ミポポ「ムラムラしちゃって寝れない24歳のひまっ子です♡ちょうどスッキリしちゃった♡そういえばどこ住みで何歳なのぉ!?

 ぼく「24歳だよー、三重県に住んでる」

 24歳関東女ミポポ「わー!同じ住みだよΣ私は地元も同じなんだぁ♪

 …あ、あれ?関東じゃないの?「マジカルメール」のプロフィール欄には関東って書いてあったはずなのに…。三重県はどうあがいても関東じゃなく、あったとしても中部地方。なのに関東…?不思議に思い、「関東じゃなかったの?」と聞いてみた。

 24歳関東女ミポポ「なんで関東登録になってるんだろう(汗)でも同じだと親近感出てきたよう♡地元以外のどこか遠くにで遊びたいと思うんだぁ…いつもどのへんで遊んでるのかなぁ?

 ごめんなさい。家でしか遊んでません。遠くになんか行きません。行く友達がいません。みんな遠くにいるし会いに行く用事もないので遊びません。「家!」って言うのもアレだし、昔、ビッチと遊んでた「京都とか奈良あたり」と答えた。すると、

 24歳関東女ミポポ「いいね^^今度遊んじゃう?xxxxxxxx@docomo.ne.jp

 …ちょっと展開が早すぎやしませんかね?それにLINEで十分に会話できると思うのに…。少し不審に思い、「LINEじゃだめなの?」と尋ねてみた。

 24歳関東女ミポポ「だって…マジカルメールで投稿したから、知らない人からもいっぱい返事来て大変なんだもんTTラインは一回削除するから直で連絡してくれて大丈夫だよぉ♡

 なんでラインを削除するんだろう…意味がわからない。友達の連絡先とかも登録してあるものじゃないの?なのになぜ削除するのか。それにマジカルメールは1通送って、届く相手は1人だけ。知らない人からも返事が来ることはない。そういうアプリもあるのはあるが、それは別のアプリにしかない機能だ。だめだこの人、完全にごちゃまぜになってる。酔っ払った影響なのだろうか。それともサクラ?新たな出会い系?不審に思いつつも、とりあえず性欲に身を任せて携帯アド宛にメールを送ってみた。すると返事がすぐに返ってきた。

 24歳関東女ミポポ「メールありがとう♡男の子と普段メールすることとかゼロだから今すっごい緊張しちゃってます。

 普段メールしない割にお酒に酔った勢いでLINEに招待とかするんだな…女の子の行動力っていったいどうなってるの…理解ができない…。その続きにも、驚くべき事が書かれていた。

 24歳関東女ミポポ「それとみほ、今使ってる携帯がメールアプリバグっててちゃんと受信とかできなくなっちゃってて…途中でメール止まっちゃったらごめんね。普段はパティシエやってて毎日スイーツとか作ってます!ブログもやってるから教えておくね☆http://ameblo.jp/xxxxxx/

 メールアプリってバグるの…?聞いたことがないんだけど…。docomoだったしGALAXYか?さすがにそんな初歩的なバグはdocomoはすぐに治すはずだし、メールがバグるようなら友達とメールが一切できないだろうに…。この子は友達がいないのだろうか。それともただのどうしようもない出来損ないのサクラなのか?とりあえず、本物なのかどうかはblogを読めばわかるはず。やっぱり偽物ならばそれらしい事を書いている。僕はメールの続きを読むのを一旦やめてblogを読むことにした。

 そこには驚くべき事が書かれていた。ミポポには兄がいて、その兄は生まれつき下半身不随なのだそうだ。その兄の世話をしている影響で、男性を恋愛対象として見ることができず、男性恐怖症になってしまったそうだ。パティシエの仕事についても書かれていたが、それについてはとても楽しそうに書いてあった。僕には、パティシエをやりがいに感じながらも、心に大きな傷を負っているのを隠し、楽しく振舞っているかのように見えた。お酒を飲んでムラムラしてしまったのも、きっと普段のストレスからきているのだろう。僕はミポポさんに同情した。支えてあげようと思った。僕もミポポさんの兄の世話をしながら、ミポポさんの男性恐怖症を取り除いてあげて、いつか2人で幸せになろう。そう思った。メールアプリがバグるのは嘘っぽいとかLINEのIDを消す意味がわからないとか、挙げ句の果てにはサクラだと疑ってしまった事をとても情けなく思った。ミポポさんごめんなさい。

 僕は一粒の涙を心のなかで流したあと、メールの続きを読むことにした。

 僕の未来の花嫁ミポポ「とりあえずもしメールアプリのバグとかで連絡取れなくなったりするのはつらいし、みほのパティシエブログ載せてる場所もう一個教えておくね!こっちだったらチャットとかもできるっぽいからこのあと連絡してくれると嬉しいな☆http://xxxx.net/miho_mail/ とりあえずみほ、こっちから連絡来るの待ってみるね!スマートフォン調子悪いからこのままメールアプリ削除しちゃうね…。それじゃ、チャットから連絡くるの待ってるね♡

 僕はそこに書かれていたアドレスにアクセスした。そこには、「友達トークの招待状を送る事でその人と連絡が取れるようになる」と書かれていた。よくわからないけどとりあえずこの人と連絡と取って結婚しないといけないからメールを送ってみた。

 しかし、ミポポから連絡がくることはなかった。招待状の返事すら返ってこない。なぜなのか…。わけがわからないので、ミポポの携帯アドに「届かないんだけど?」とメールを送ってみた。でも、すでにメールアドレスは削除されていた…。ミポポはすでにメールアプリなるものを削除していた。

 LINEもすでに退会している様子で、連絡を取る手段が何もない。困った。僕はフリアドだけではなく携帯アドからも友達トークの招待状なるものを送ってみた。だが、返事はなかった。


 僕は一切返事が来ない携帯電話と睨めっこをしている最中、すっかり熟睡しきっていた。目覚まし時計が鳴り、目が覚め、携帯電話にミポポから連絡が来ていないか確かめた。


 メール受信数:286件


 中身はミポポからのメールではなく、すべて出会い系サイトからのメールだった。なぜ出会い系サイトからたくさんのメールが届いたのかはよくわからないが、いつかはミポポから連絡があると信じ、今もなお友達トークの招待状を送り続けている。