資格試験前日の深夜に受検票がないことに気付くまで。

 今日は待ちに待った資格試験の前日。明日のために、これまでで一番勉強してこれた自負がある。それだけ、この資格に賭ける思いは強い。といっても、これは実際には通過点に過ぎず、ここでつまづいているようでは未来は無い。そういうつもりで、軽く突破するつもりで、かといって慌てず、手を抜かず、本気で向かっていく。そのつもりでこれまで勉強してきたのだ。

 明日は日曜日だが、仕事はシフト制なので本来は日曜日といえど出勤しなくてはならない。なので、1ヶ月前に休みをもらえるように申請しておいた。準備はあらかたバッチリ。あとは少し覚えきれてない部分を勉強し直して補っていくだけ。

 そんな前日である今日は仕事があった。早く終わらせれば早く帰れる仕様なので、なるべくてきぱきと進めていく。集中力をここで使いたくないので無心で作業を行う。誰も話しかけるな。試験のことだけ考えさせてくれ。そう思いつつ、淡々と取り組んだ。

 ベストタイムに迫るだけの短時間で終了。急いでタイムカードを押して家に帰り、急いで晩飯を食べる。そして、それまでやっていなかった試験会場への行き道を確認。ふむふむ、最寄り駅から徒歩15分。少し遠いから場所をしっかり覚えておかなければ。この国道を東に進んで信号を左折。左手のコンビニがある道を進めばだいたいOK、か。よし、道に迷うことはなさそうだ。

 電車の時間も確認。朝起きる時間も確認。今まで起きてきた時間よりも早めに起きなければいけないのが少し大変だが、それを乗り切るために早く寝なければ。そして、電車の乗換案内の行き、帰りともに写メを撮っておき、乗り換えはこれで完璧。会場への移動で戸惑うことはないだろう。

 と、このあたりで寝る時間に迫ってきていることを確認。覚え切れていない部分を再び覚え直す。あれはこうで、これはああで…。間違えて覚えていた部分を何度も確認し直して、過去問をほぼ間違えないレベルまで覚えたし、これで問題ないはずだ。あとはこの頭にある知識を明日に活かすだけ。

 さて、あとは受検票に写真を貼れば終わりだ。つい2日前に700円もする証明写真機で撮ったばかり。無くさないようにタンスの上に置いておいた。これを写真票に貼り、これでばっちり。よし!あとは寝るだけだ!

 ―――と、その前に。受検票の裏に書いてあるところを読み直そう。本番に必要なものは、筆記用具、電卓、写真票、受検票。受検票って今見てるやつでいいんだよね?と表を見た。

 

 あれ、これ、本人用の控えだぞ……?

 本番用のはどこだ?捨てた覚えがないからどっかにあるはずだけど…?

 ………

 ……

 …

 ない。

 見当たらない。

 過去の記憶を呼び覚ましたとき、気付く。

 本人控えのものを、これは控えだからと大事にファイルに入れていたこと。

 もうひとつのほう(試験に必要な受検票)はいらないからと思い捨てていたこと。

 

 この時、自分がバカであることに気付かされた。それまであまり直視していなかったけど、今までの生き方が現れているバカさそのものだった。関西人である僕がバカと表現しているので、これは本当のバカ。バカ中のバカである。死にたい。今までの苦労はなんだったのか。気が抜け、なぜか笑いがこみ上げる。自然と顔がニヤつき、自分の周りに置かれた勉強道具全てがゴミに見えた。これを書いている現時刻は深夜2時前。試験用に取った休みをどう使うかはまだ未定である。